高齢の親の財産管理ですが親子でも勝手にお金をおろしたりできないと聞きました。認知症がひどくなる前の対策を教えてください。
質問です。高齢となった親御さんの財産管理はどなたが行っていますか?
- ご本人に任せている
- ご本人と共に管理されている
- ご本人の許可なく、管理されている などご家族によって異なるのではないでしょうか。
実は、親子間であっても財産管理で預金を勝手に引き出すことはご法度と言われています。それが、認知症などの理由から判断能力が低下していたとしてもです。
なぜ、親子なのに判断能力が低下していても勝手に管理することに対し、問題があるのでしょうか。
そこで今回は「高齢の親の財産管理と対策」についてご紹介します。
▶ 親子間での財産管理
「親が高齢だから」という理由で、親御さんの財産を勝手に引き出すことはできません。
理由:これには法律上のルールが関係しています。銀行口座は名義人の財産です。家族であっても名義人以外の人が自由に引き出すことは法律違反となります。
▶ 認知症が進行する前に
親御さん本人が健康で判断能力がある場合、財産を勝手に引き出すことができません。
しかし、病気やケガの影響から判断能力が低下してしまった場合(認知症の症状が現れた場合)、事前に以下の対策がおすすめです。
1.任意後見制度を活用する
[任意後見制度とは]
本人が将来、認知症や病気によって判断能力が低下した際、信頼できる第三者に財産管理や生活のサポートなどを依頼するための契約を指します。
[契約など]
任意後見制度は本人の認知症が進行する前に契約行うもので、公正証書を公証役場などで作成し契約を結びます。本人の判断能力が低下した際、本人の同意の上、任意後見受任者が家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立を行い、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから、効力が発生します。
[できること]
- 認知症が進行した場合でも後見人が親御さんの財産を管理する。
- 財産管理だけでなく、介護施設への入所手続きや契約などの支援が可能。
2.家族信託の利用を検討する
[家族信託とは]
信託法に基づいた制度で、財産の所有者(今回であれば、親御さん)が特定の目的から、財産の管理または運用を信頼できる第三者(受託者)に任せることが可能です。
[契約など]
信託契約書を公正証書にしておくと、必要になった際に信託内容の確認がスムーズに行えます。また、家族信託には法律や税務の知識が必要になります。行政書士や司法書士といった専門家への相談をおすすめします。
[できること]
- 親御さんの生活費だけでなく、介護費用など、必要な範囲で財産の管理や運用が可能。
- 受託者が自由に財産の移動ができるため、財産の管理がスムーズに行える。
- 親御さんが亡くなった後の財産分配を事前に決めておける。
3.代理人カードを利用する
[代理カードとは]
親御さんが銀行で口座を持っている場合、銀行口座を本人の委任によって、代理人が取引を行うために作成される専用のキャッシュカードのことを指します。
[作成など]
作成は口座を持っている銀行で行いますが、全ての銀行で対応しているわけではありません。発行の可否は取引のある銀行へ確認してください。
[できること]
- 親御さんが認めた範囲内で、指定口座から預金の引き出しや振り込みを行う。
- 日常的な支出や介護費用の支払いに活用など。
*代理カードはあくまで本人の意思、判断能力がある間のみ利用可能です。認知症が進行し、判断能力が低下または失ってしまった場合は無効になるため、要注意。
▶ 比較してみよう
上記でご紹介した3種類の開始条件・用途・注意点を表で見てみましょう。
比較表
方法 | 開始条件 | 主な用途 | 注意点 |
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任意後見 | 契約締結(親御さんの意思能力必要) |
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家族信託 | 契約締結(親御さんの意思能力必要) |
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代理人カード | 親の意思能力がある |
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▶ まとめ
今回ご紹介した対策はご本人の判断能力が必要です。
認知症だけではなく、どの病気であってもいつどうなるかは誰にもわかりません。親御さんに代わって財産管理をとお考えの場合は早め早めの対策が大切です。
これらの対策は専門的な知識を必要とするものもあります。何にどのような準備が必要なのか、どの対策がご家族にとってより良いものなのか。ご家族に合った方法を行政書士や司法書士など、専門家に相談してみましょう。
種と実 行政書士事務所は、遺言・家族信託・成年後見の専門家です。
大切な財産、ご先祖様から代々受け継がれてきた資産をこれからも笑顔で繋げられるよう、皆さまの思いに寄り添った解決策をご提案させていただきます。
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