母と折り合いが悪く行き来も長年していませんでしたが、先日亡くなったと連絡がありました。姉や兄がいるので死後事務は心配ありませんが、遺言書がみつかり、私には一切金銭も相続なしと明記してありました。遺留分を請求したいのですが、どのようなものでどうすればいいのでしょうか
実の親と子とであっても、性格の違う人と人。相性が良くないということはよく聞く話しです。
その関係の中で親御さんと和解することなく、お別れとなってしまうこともあるかもしれません。
親御さんからしてみれば、和解できずにいるお子さんに対する遺産相続はネガティブな思いを持って、遺言書を残されることも。
どんな親子関係であっても、法定相続人となれば遺産を受け取る権利は存在します。
しかし、法的効力のある遺言書にネガティブな明記があった場合、しかるべき手続きを行わない限り、遺産を受け取ることができません。
そこで今回は「遺言書で相続なしが発覚。遺留分の使い方」をご紹介します。
▶ 遺留分とは
相続人が遺産取得分を最低限受け取れるよう保障するためのものを”遺留分”と言います。
遺言書では、相続財産を自由に配分できる一方で、特定の相続人に対し、最低限の相続権も認められています。
今回のように、遺言書が遺留分を侵害する内容であっても、遺留分を有する相続人は「遺留分の請求(遺留分侵害額請求)」を行うことで、法律で保障された最低限の財産を受け取る権利の行使が可能です。
(*簡単な解説:遺産取得分が少ないまたは遺言書に一切の相続なしとなっている相続法定相続人は、遺留分の請求を行うことで最低限の財産を保障されます。)
▶ 遺留分の割合
遺留分には相続人が直系尊属かそれ以外かによって、割合が異なります。
直系尊属(親)のみが相続人:法定相続財産の1/3
上記以外(兄弟姉妹を除く):法定相続財産の1/2
例えば)
[母の残した財産が 1,000万円で、法定相続人の姉・兄・あなたの3人の場合]
遺留分全体は、法定相続財産の半分(1/2)の遺留分が対象です。
1,000万円×1/2=500万円
あなたの遺留分の割合は、遺留分全体の500万円を法定相続人の3人で割ります。
500万円÷3=約166万7千円
従って、あなたの請求可能な遺留分侵害額は「約166万7千円」となります。
*直系尊属(ちょっけいそんぞく)‥被相続人よりも上の世代の血族、父母・祖父母・曾祖父母のこと。ちなみに被相続人よりも下の世代の血族、子どもや孫・曾孫は直系卑属(ちょっけいひぞく)と言います。
▶ 遺留分侵害額請求の手続きについて
遺言書に遺留分を侵害する明記されていた場合、遺留分侵害額請求(遺留分の請求)の手続きを行うことで、最低限の財産を受け取ることができます。
以下、手続きの手順です。
- 財産の確認:被相続人(本人)の遺産内容(預貯金・不動産・その他)の確認。
- 専門家へ相談:行政書士や弁護士などに相談、遺留分の計算を行う。
- 請求書の送付:あなたの遺留分を侵害している他の相続人(今回であれば、姉や兄)に「遺留分侵害額請求書」を送る。
- 交渉または調停:こちらは話し合いで解決しない場合にのみ、家庭裁判所で調停や訴訟を行います。解決した場合はありません。
▶ 遺留分侵害額請求を行う注意点
以下、注意点です。
1.時効に注意
遺留分侵害額請求には、相続開始または遺留分の侵害を把握した日から1年以内に行う必要があります。
*1年を超えた請求には法的効力がなくなるため、注意しましょう。
2.遺言内容に注意
遺言が正式な形式で作成されているのか確認が必要です。
*遺言の形式は主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。
▶ まとめ
遺留分侵害額請求(遺留分の請求)は遺言書に遺留分を侵害する内容が明記されていた場合に、法定相続人として最低限の財産を受け取る権利が行使されるものです。
手続きを行う場合は、遺留分の計算や他の相続人への請求書送付など、順を追って手続きを進めなければなりません。
自分だけで進めのではなく専門家へ相談し、請求手続きを行うようにしましょう。
種と実 行政書士事務所は、遺言・家族信託・成年後見の専門家です。
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