遺言は夫婦で別々に書いておいた方がいいのでしょうか?
近年では、子どもたちに遺言書を作成する際、両親が共に遺言書を作成するケースが増えています。
しかし、遺言作成にはさまざまな規定があり、作成方法によってはその規程から外れてしまい法的効力が発生されず、遺言内容が無効になってしまう場合も。
子どもたちが相続する際、揉めてしまうことのないようにと先回りに作成した遺言でも、効力が発生しないのであれば、何の意味もありません。
せっかく遺言書を作成するのであれば、無効にならず、スムーズに相続を終えたいと考える方がほとんどではないでしょうか。
そこで今回は「遺言書を作る際、夫婦は別々で作成するのか」についてご紹介します。
▶︎ 夫婦で遺言書を作る理由
遺言書を作成する際、片親(特に父親)だけでなく、夫婦2人ともに作成される方が増えています。
その理由に、”1人が作成した遺言書よりも両親2人の意思のもとで作成された遺言書の方がその思いが強く伝わる” と考えられるからです。
但し、作成方法によって、遺言書が無効となることがあるので、作成方法には注意が必要です。
[夫婦で作成する理由の一部]
- 意思表示を明確にしたい
- 相続で揉めてしまわないか不安なため
- 相続の手続きで子どもたちに負担や手間を取らせたくないため など
▶︎ 夫婦共同での遺言作成は無効
遺言書では2人以上が同一の証書で作成することはできません。
以下、民法の条文ままです。
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民法第975条(共同遺言の禁止)
遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。
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これは夫婦であっても、遺言書を共同かつ同じ書面で作成した場合、その遺言書は無効になるということを意味しています。
▶︎ なぜ共同遺言できないのか
共同遺言が禁止な理由は、”遺言の撤回が出来なくなる可能性がある”からです。
遺言は、遺言者の意思の最終確保を重視しています。そのため、遺言者の意思で「作成・撤回が可能」となっています。
2人など複数人で共同作成の場合、作成・撤回をする際、作成者全員の合意が必要となります。
もし、作成者のうちの誰かが亡くなってしまった場合に、撤回の自由の確保ができなくなるため、共同での作成は禁止されています。
▶︎ 夫婦で遺言書を作成する場合
遺言書は夫婦でも例外はありません。夫婦でも遺言書を作成する際は共同ではなく、一人ひとりが別の書面で作成を行ってください。
ここで、注目なのが ”一人で一通の遺言書として作成されていれば内容は同じでも問題ない” という事です。
いくら文面が重複していても、署名する人物の名前が一人かつ別の書面であれば、無効になることはありません。
また、遺言書の作成は自筆証書遺言ではなく、法的効力のある ”公正証書遺言” で作成を行いましょう。
▶︎ まとめ
夫婦で遺言書を作成される場合、「夫婦であれば共同で作成してもいいのでは?」と思われることがあるかもしれません。
しかし、夫婦だとしてもそのような作成では遺言書は無効になってしまいます。
遺言は作成者の意思のもと、作成と撤回が認められており、複数人での作成はその意思から逸脱する可能性が高まるため、認められていません。
子どもたちに相続の際、「揉めてほしくない」「手続きで負担をかけたくない」という明確な考えがあるのであれば、作成方法をしっかり確認し、法的効力の得られる遺言書の作成を目指しましょう。
種と実 行政書士事務所は、遺言・家族信託・成年後見の専門家です。
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