
3年前に夫を亡くし、子どももいません。兄弟は4人いますが、兄弟には相続の遺留分がないと聞きました。 お世話になった一番下の弟だけに土地と預金を残したいのですが、どうすればいいのでしょうか
ご両親や配偶者が亡くなり、お子さんもいない場合、兄弟姉妹が遺産相続の対象になります。
その際、特定の兄弟姉妹に全財産を遺したいという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、全財産を特定の人物に遺すとなると、相続人同士のトラブルに発展してしまうことも少なくありません。
お世話になった兄弟姉妹に感謝を込めて、相続を考えていても、トラブルになってしまっては元も子もありません・・。
そうならないためには、どのような対策を進めたらいいのでしょうか。
今回は「特定の兄弟姉妹に全財産を遺したい!その場合の対策はどうしたらいい?」についてご紹介します。
▶ 相続人が兄弟姉妹のみの場合
今回の相談者さんのように、配偶者が既に亡くなっており、お子さんもいない場合、法定相続人は ”兄弟姉妹” になります。
通常、財産は兄弟姉妹に法定相続分に従って分けられます。
しかし、今回の相談者さんは、「特定の弟だけに残したい」との希望があります。そこで大切になるのが ”遺言書の作成” です。
▶ 兄弟姉妹には遺留分がない
遺留分とは:相続人が遺産取得分を最低限受け取れるよう保障するためのものを言います。
子や配偶者、直系尊属(親など)には遺留分がありますが、兄弟姉妹には遺留分がありません。
つまり、兄弟姉妹に法定相続分があったとしても、遺言によって全財産を特定の人物(今回であれば弟さん1人)に渡すことが可能になります。
▶ 特定の人物に遺産を残す方法
特定の人物(今回であれば弟さん1人)に財産を遺したい場合は、以下の方法が有効です。
1.公正証書遺言の作成
この方法が最も確実な方法です。公証役場での作成することで、遺言の形式不備の心配がなく、家庭裁判所での検認が不要です。
2.自筆証書遺言
この方法は、手軽に作成可能ですが、形式のミスが発生しやすく、無効になるリスクがあります。
ちなみに、2020年から法務局で保管する制度が始まっており、以前よりも少し使いやすくなりました。
3.財産の名義変更に関する配慮をする
「土地」は相続登記が必要です。遺言で指定していても、その後の登記や手続きが弟さんにとってスムーズに進められるよう、遺言執行者の指定をするなどの配慮をおすすめします。
▶ 付言事項を添える
遺言書には、法的効力のある ”財産の分配内容” だけではく、「なぜそのように遺したいのか」という遺言者の想いを伝えることのできる ”付言事項” を添えることができます。
感謝の気持ちと託そうと思った理由を付言事項に記すことで、残された他の兄弟姉妹とのトラブルを避ける手助けにもなります。
▶ まとめ
相続人が遺産取得分を最低限受け取れるよう保障されている遺留分。
心強い制度である一方で、兄弟姉妹には遺留分は存在しないため、遺言内容によっては特定の人物に全財産を相続することが可能です。
しかし、特定の人物に全財産を遺すには、他の相続人とのトラブルを防ぐために遺言書の作成、なかでも「公正証書遺言」が有効です。
その他、遺言書以外に遺言内容に対する想いを伝える「付言事項」を一緒に用意しておくことも大切です。
財産の行方は、遺言者の想いの表れ。
その想いから相続人同士のトラブルへ発展させないためにも、事前に備えておけたらいいですね。
公正証書遺言や付言事項について不安なこと、わからないことがあれば、専門家への相談がおすすめです。
種と実 行政書士事務所は、遺言・家族信託・成年後見の専門家です。
大切な財産、ご先祖様から代々受け継がれてきた資産をこれからも笑顔で繋げられるよう、皆さまの思いに寄り添った解決策をご提案させていただきます。
まずは、お気軽にご相談ください。